療養型病院で働く社会福祉士って、どんな仕事をするの?

相談員
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こんにちは、フクシです。

療養病床、あるいは療養型病院という言葉、聞いたことありますか?

療養型病院の相談員がどんなことを仕事としているか、ご存じですか?

療養型病院は、医療的な処置を必要とする方が終末期を過ごす場となっています。

その業務内容は大きく分けると、

  • 入院の相談と関係機関との調整
  • 医療区分の割合の管理
  • 入院患者の療養生活と入院費に関する相談
  • 退院に関する相談と、在宅チームとの連携

となります。

今回はそんな、療養型病院で勤務する相談員、社会福祉士の業務内容とその魅力について、お伝えします。

療養型病院への就職を検討している方、そもそも働き方を知りたい方、ぜひご覧ください。

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そもそも療養型病院、療養病床ってなにするの?

現在の日本には、以下の5つの病床群が存在します。

  • 一般病床
  • 療養病床
  • 精神病床
  • 結核病床
  • 感染症病床

この5つの病床群のうち、療養病床を持つ病院を療養型病院と言います。

療養病床とは

医療法によると…

病院又は診療所の病床のうち、前三号に掲げる病床以外の病床であつて、主として長期にわたり療養を必要とする患者を入院させるためのものをいう。

医療法第四章第一節第七条2の四より

ここで言う前三号とは、精神病床、感染症病床、結核病床を指します。

具体的には、医療処置等が必要な方が長期的に入院できる病床となっています。

医療処置等とは

医療処置等とは、医療区分2および3に該当する状態を指します。

医療区分の具体的な内容につていは後述しますが、

  • 週3回の血液透析を行っている
  • 常に酸素吸入が必要である
  • 気管切開している

などがあります。

そしてこれらの処置が必要な方は、長期的に入院ができます。

長期とはどれくらいの期間か

長期を具体的な数字で表すことはできませんが、医療的な処置が必要な状況が続いている間は入院が可能です。

要するに、医療区分2あるいは3に該当していれば、最期まで療養病床で過ごすことができます。

穏やかに最期を迎えて頂く

療養病床では、心臓マッサージなどの延命・蘇生と言った行為は原則行いません。

亡くなりそうな状況になったら、自然な形でお看取りします。

DNRやDNARという言葉を聞いたことがありますか?

患者本人または患者の利益にかかわる代理者の意思決定をうけて心肺蘇生法をおこなわないこと。ただし,患者ないし代理者へのinformed consentと社会的な患者の医療拒否権の保障が前提となる。欧米では実施のためのガイドラインも公表されている。1995年日本救急医学会救命救急法検討委員会から「DNRとは尊厳死の概念に相通じるもので,癌の末期,老衰,救命の可能性がない患者などで,本人または家族の希望で心肺蘇生法(CPR)をおこなわないこと」,「これに基づいて医師が指示する場合をDNR指示(do not resuscitation order)という」との定義が示されている。

DNAR 日本救急医学会・医学用語解説集 (jaam.jp)

入院時に担当となる医師から説明と確認がなされますが、療養病床では病院の機能として心肺蘇生を行う装置を持っていません。

したがって必然的に、療養病床へ入院する場合はDNARの方針となります。

療養病床の相談員は、どんな仕事をするの?

では具体的に、療養病床の相談員がどんな仕事をしているか。

私の経験ベースにはなりますが、紹介します。

入院相談と、その調整

療養病床へ入院する患者の大半は、もともと急性期病院で入院していた方です。

※急性期病院とは

二次救急、三次救急などと呼ばれ、救急車が到着する病院です。

脳梗塞やがん、骨折などの病気やケガに対し、手術などの積極的な治療を行うことで病気になる前の状態に治すことを目的とした病院です。

急性期病院へ入院した患者は、治療が終了すると退院となります。

しかし自宅へ退院することができず継続した医療処置が必要な方が、長期的に療養するために、療養病床へ転院となります。

転院の打診

具体的な転院の流れとしてはまず、急性期病院などの相談員から、「こういった方は入院の対象になりますか?」と連絡が来ます。

受け入れが可能そうな場合は紹介状や看護サマリーなどが送られてきます(だいたいがFAXです)ので、改めて、対応が可能か判断します。

この判断は、医師や看護部長などの医療職が行います。

入院相談

対応が可能だと判断した場合、患者家族に病院へ来てもらい入院相談を行います。

入院相談の内容は病院により異なりますが、

  • おおよその一か月あたりの入院費
  • 延命、蘇生行為は病院の方針としてできないこと
  • (医療区分1に該当した時など)病院から退院を促すことになる状況

を相談員から伝えます。

ご家族やキーパーソンとなる方の様子を観察し、人となりを感じ取ることも重要です。

判定会議

入院相談で感じたご家族の様子や、紹介状、看護サマリーをもとに判定会議を行います。

(病院によっては省略することもあります)

この判定会議で通ると、入院対応が可能となります。

入院日の決定と連絡

判定会議にて入院対応が可能となれば、ご家族と入院日の調整をします。

日時が決定したら紹介元病院へ連絡し、搬送の手配の依頼をしましょう。

原則として、搬送の手配は紹介元の責任となります。

医療区分の割合の管理

医療区分とは、療養病棟における患者に対する医療の必要度を評価する指標のことです。

療養病棟に入院する患者は全員が医療区分1か2か3に分類され、一般的には医療区分3の方が医療の必要度合いが高くなります。

療養病棟の相談員は、全入院患者のうち医療区分2及び3に該当する患者が占める割合が、8割以上になるよう管理しなければなりません。そのためには、医療区分1の患者に対して退院支援をする必要があります。

どの患者が退院支援の対象となるかを確認するためにも、医療区分の割合の管理が必要となるのです。

なお前3か月間の医療区分の割合の平均が8割を切ってしまうと、病院としての収入が大幅に減ってしまいまうので注意が必要です。

医療区分3とは

以下の疾患や状態、医療の提供が必要な患者は、医療区分3に該当します。

  • スモン
  • 24時間モニター管理が必要で、他に医療区分2,3に該当する場合
  • 中心静脈栄養を行っており、摂食機能又は嚥下機能の回復に必要な体制を有している場合
  • 人工呼吸器を使用していたり、ドレーン法 、胸腹腔洗浄を行っている場合
  • 気管切開、気管内挿管をしており発熱を伴った場合
  • 感染症のため隔離対応する必要がある場合
  • 常時流量3L/分以上の酸素療法を必要とする状態

医療区分2

以下の疾患や状態、医療の提供が必要な患者は、医療区分2に該当します。

  • 筋ジストロフィー
  • 多発性硬化症
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • パーキンソン病関連疾患(パーキンソン病、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)
  • (スモンを除く)その他指定難病の診断を受け、医療受給者証の交付を受けている場合
  • 脊髄損傷(頸髄損傷)
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 疼痛コントロールが必要な悪性腫瘍(癌)
  • 肺炎
  • 尿路感染症
  • リハビリテーションが必要な疾患が発症してから30日以内
  • 脱水かつ発熱を伴う状態
  • 体内出血(消化管出血など)
  • 頻回の嘔吐かつ発熱を伴う状態
  • 褥瘡
  • 末梢循環障害による下肢末端開放創
  • せん妄
  • うつ状態
  • 暴行が毎日みられる状態(原因・治療方針を医師を含め検討)
  • 24時間モニター管理をしており、他に医療区分2又は3に該当する項目がない場合
  • 人工透析
  • 経管栄養をしている患者が発熱又は嘔吐を伴った場合
  • 喀痰吸引を行った場合1日8回以上
  • 気管切開
  • 気管内挿管のケア
  • 頻回の血糖検査
  • 創傷(皮膚潰瘍・手術創・創傷処置)に対して1日2回以上処置している場合
  • 酸素療法(医療区分3に該当するもの以外のもの)

医療区分1

医療区分1に該当する患者は、上記医療区分3び2のいずれにも該当しない場合で、医療の必要度合いが低いことを示します。

退院して介護施設や自宅でも生活できる状態であることを国も認めており、療養病棟に長期で入院している必要はありません。

医療区分の細かい内容は、クワホピ(外部リンク)というサイトがとても参考になります。

私も良く、お邪魔しています。笑

療養病棟の入院基本料

療養病棟の入院基本料(一日当たりの医療費)は、医療区分に加えてADL区分というもので判断されます。

ADL区分も3段階に分かれており、3の方が身体介助の度合いが高くなります。

医療区分1医療区分2医療区分3
ADL区分3968点1,414点1,813点
ADL区分2920点1,386点1,758点
ADL区分1815点1,232点1,471点
療養病棟入院基本料1の場合

医療区分1の患者は入院基本料が低く設定されており、報酬の観点からも「病院に入院している必要のない人」となるのです。

患者一人一人がどの医療区分、ADL区分に該当するかを見るのは看護師や介護職員の仕事ですが、その割合は相談員が管理する病院が多くなっています。

退院に関する相談と、その調整

退院できたら、お散歩へ

一昔前まで、療養型病院は一度入院したら亡くなるまで退院する必要が無い病院でした。

そのためか、いわゆる「社会的入院」が増え、医療費逼迫ということが起きたのです…

しかし先ほどの医療区分1の患者は自宅や介護施設でも過ごせる状況であることからもわかるように、医療区分1で状態が安定しているからは、療養病棟からも退院していただく必要性があります。

そのための支援、調整をするのが療養病棟の相談員の仕事です。

とは言え急性期病棟や回復期病棟の様に、入院期限が定められているわけではありません。

時間をかけて一人一人の患者と向き合えるのは、療養病棟ならではの魅力でしょう。

もちろん、退院に伴い居宅ケアマネジャーやその後のかかりつけ医との調整業務は必須です。

うまく他機関と付き合うことを意識しましょう。

療養病床で相談員として働く魅力とは

療養病棟で相談員として働く魅力は、

患者の人生の集大成に立ち会える

ことです。

療養病棟から退院する患者のほとんどは、お亡くなりになって退院します。

人生の終末期を迎える患者やそのご家族と、どのようなかかわりを持つことができるのか。

私は以前、ACP会議に参加したこともありました。ご家族皆さんの患者さんに対する気持ちを感じることができて、とても良い時間でした。

しかし中には、

  • 治療方針でキーパーソン以外の家族が意見すること
  • 遺産相続問題で修羅場に巻き込まれること

などがあるかもしれません。

しかしそんなことはまれで、ほとんどの方は穏やかに過ごされます。

療養型病院の相談員も、他の急性期病院などと比べればマイペースに仕事できることが多いでしょう。

もし興味を持たれた方がいましたら、こちらから検索してみて下さい。

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