老健で受けることができるリハビリの内容と、その回数とは?

介護施設
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こんにちは。複業するフクシです。

介護老人保健施設=老健というリハビリを行える介護保険施設で、相談員として働いています。

入所前にご家族と話をしていると、よく

「リハビリができると聞きました。歩けるようになったら、また家でみたいです」

「うちは段差が多いから。一人で上り下りしてもらえたらありがたいです」

という話をよく聞きます。

  • リハビリができる=ADL(運動機能)が回復・向上する
  • リハビリをいっぱいやってもらえる

と期待している方が多い印象です。

しかし実際には、加齢とともに低下した運動機能が回復することは難しい場合がほとんどです。

そこで今回は、

  • 老健のリハビリに過度な期待は禁物
  • 自宅の環境に合わせて、生活しやすい方法を考える

という、老健で実施されているリハビリテーションの内容について、お伝えします。

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そもそも老健って?

老健=介護老人保健施設は、要介護認定を受けている高齢者が一時的に入所し、リハビリをしながら在宅復帰を目指す『中間施設』と呼ばれている介護保険施設です。

在宅復帰をする方が多い割合は、

超強化型>在宅強化型>加算型>基本型>その他型

の順となっております。

基本的なリハビリの回数

在宅復帰を目指すうえではリハビリを実施する回数が重要かと思いますが、超強化型と在宅強化型の老健は週3回加算型と基本型、その他型の老健は週2回のリハビリが義務付けられているのみです。

なおかつ、要介護者とリハビリ専門職がマンツーマンで行う個別リハビリは週1回以上という規定ですので、残りの回数はほかの利用者と一緒に行う集団リハビリを週1回、という事業所が多くなっております。

リハビリができると聞いていたのに。回数は少ないのですね。少ない回数で、以前元気に暮らしていた時みたいに歩けるようになるのでしょうか?

という感想を抱かれる方も多いのではないでしょうか。

フクシくん
フクシくん

たしかに老健のリハビリ回数は少ないので、劇的に運動機能が回復することは難しいでしょう。

そもそも加齢とともに運動機能=ADLが低下している高齢者が、大幅にその機能を回復させることは難しいのです。

老健の種類については、こちらの記事で詳しく説明しています。

リハビリ専門職について

老健では、リハビリテーションの専門職の配置が必須となっています。

リハビリテーション専門職の国家資格は、

  • 理学療法士…座る、歩く、立つなどの日常基本動作に関してのリハビリ
  • 作業療法士…基本的動作の上にある、応用的な作業や活動についてのリハビリ
  • 言語聴覚士…話すことや聞くこと、食べることなどに関してのリハビリ

の三職種です。

ただし、食べることや話すことに関してのスペシャリストである言語聴覚士は、施設によっては配置されていないこともあります。

リハビリの回数は、増やせる!?

運動機能の向上に関しては多くは期待できないのが老健におけるリハビリの実態ですが、加算をうまく活用すれば『自宅での生活を送りやすくなる』可能性は非常に高いです。

それは、次に紹介する

  • 短期集中リハビリテーション
  • 入所前後訪問指導

という在宅復帰を支えるための制度を老健が兼ね備えているためです。

短期集中リハビリテーション実施加算

リハビリテーション 平行棒内歩行

過去3か月間に介護老人保健施設への入所歴が無いことを前提条件とし、入所日から3か月間、1週間に3回以上、1回20分以上のリハビリテーションを実施した際に算定することができる加算です。

加算ですので通常の利用料に加えて1回240単位の支払いが必要となりますが、この短期集中リハビリテーションはリハビリ専門職とマンツーマンで行うことができます。

実際の時間とおおよその料金(1割負担の場合)は、以下の表のとおりとなっています。

週3回週4回週5回週6回週7回
実施単位数(週)720単位960単位1,200単位1,440単位1,680単位
実施時間(週)60分80分100分120分140分
加算額(月)約3,000円約4,000円約5,000円約6,000円約7,000円
短期集中リハビリテーション実施加算

認知症短期集中リハビリテーション実施加算

認知症の診断を受け、個別リハビリを実施することで生活機能が改善される見込みがあるとされた要介護者に対して実施されるリハビリです。

加算額は1回240単位となっています。

1回20分以上のリハビリを週3回実施することが可能となりますので、短期集中リハビリテーション実施加算と合わせますと最大で週10回、200分のリハビリを行うことができるようになります。

ただし算定要件が厳しく、

  • 精神科医
  • 神経内科医
  • 認知症のリハビリに関する専門的な研修を受けた医師

による指示でしか、実施することができません。

また利用者自身も、

  • 長谷川式認知症スケール
  • MMSE

といういずれかの認知機能検査を行い、30点満点のうち5点~25点の場合でしか算定できない加算となっています。

自宅の環境に合わせてリハビリを

老健では、

【入所前後訪問指導】

という加算を算定します。

入所前30日以内あるいは入所後7日以内に老健を退所後に生活する予定の住居を訪問し、退所を目的として施設のケアプランを作成した時に算定できる加算です。

寝室だけでなくトイレ、浴室、玄関や廊下など生活動線を確認し、段差の有無や手すり設置の必要性などについてもご家族と話し合います。

入所後訪問指導

またご家族には在宅復帰後に「どのように生活したいか」の確認も行うため、具体的な生活の様子も描きやすくなります。

そして訪問した時の様子は写真などの情報でまとめられ、全職員が共有できるようにします。

特にリハビリテーションは自宅の環境に合わせて行いますので、廊下幅や段差の高さは重要となっています。これらの情報を元に、歩行時の道具の選定や何cmの段差昇降が可能となれば自宅で苦労なく移動ができるか、ということまで考えながら機能訓練を行います。

また日常生活においても、ベッドへの移り方やトイレの使い方など、できる限り自宅環境に合わせて行ってもらうようにします(とはいえ施設なので、限界はありますが…)。

短期集中リハビリテーションと入所前後訪問指導で、在宅復帰へ

今回は、老健が在宅復帰の中間施設であるために行っている加算について、記事にしました。

  • 短期集中リハビリテーション実施加算”で多くのリハビリを
  • 認知症短期集中リハビリテーション実施加算”で生活機能の向上を
  • 入所前後前訪問指導加算”で在宅復帰後の住環境に合わせてリハビリを

算定することで、より在宅復帰が現実的となります。

リハビリテーションを行える回数は少ないかもしれませんが、多職種で連携しながら在宅復帰を目指すのが老健です。

少しでも長く、家で暮らしたいからね

という思いを大切に、老健をうまく活用してみて下さい。

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